深刻な社会問題を引き起こす酸触歯

酸触歯は「酸」によって歯の表面を覆っているエナメル質が溶かされる病気です。酸性の強い飲食物の過剰摂取や逆流性食道炎、拒食症・過食嘔吐・過度なダイエットの影響でお口の中が長時間酸性に傾いていると、歯を溶かしてしまいます。酸触歯になる方は年齢を問いませんが、特に若い世代を中心に多くみられ、欧米等では深刻な社会問題になっています。

歯が溶けていくメカニズム酸触歯
エナメル質はもっとも表面にある層で、ミネラル成分で構成されています。飲食物を摂取すると、一時的にお口の中が酸性に傾きます。その影響でミネラル成分が溶けて歯の表面が柔らかくなり、むし歯ができやすくなります。これを脱灰といいます。その後、一定の時間が経過すると唾液の働きで中性になり、溶け出た部分にミネラル成分が戻って元の状態に戻ります。これを再石灰化といいます。お口の中で脱灰と再石灰化を繰り返しているので、むし歯のない健康な状態に保つことができるのです。

問題は、お口の中がいつまでも酸性に傾いている場合です。
歯が再石灰化するにはある程度の時間がかかります。酸が中和される前に、ワインやコーヒー、かんきつ類等を再び摂取すると酸性の状態が長くなり、再石灰化するまでに、さらに時間がかかります。これが継続的に繰り返されると、エナメル質を修復することができなくなり、歯質が弱くなって薄くなります。さらに歯質が溶かされていくとエナメル質の下にある象牙質が見えてきて黄色っぽくなるのです。

酸触歯の原因
酸には色々な種類があります。
酸触歯の原因となる酸は、飲食物に含まれている酸と体内から分泌される酸とに大別されます。

・飲食物に含まる酸
代表的な物として、炭酸飲料、スポーツドリンク、トニックウォーター、ワイン、コーヒー、かんきつ類、トマト、いちご、ドレッシング等

・体内で分泌される酸
逆流性食道炎や拒食症・過食症等で過度な嘔吐があると、逆流した胃酸や胆汁によって歯が溶かされます。

<酸触歯の症状>
・熱い物や冷たい飲食物を摂取すると、歯がしみる
・歯が黄ばんでいる
・歯が透けて見える
・歯の表面の凹凸がなくなったり、角が丸みを帯びたりしてきた
・歯の艶がなくなってきた
・被せ物・詰め物が取れやすくなる